【ミエルカ2016/代表者の志インタビュー】金 南玧さん(認定NPO法人名古屋ろう国際センター:「真如苑」コース)

「助成先が志を語るドネーションパーティ!」では認定NPO法人名古屋ろう国際センターの金南玧さんがスピーチをしてくれました。キムさんが語ったろう児家庭の課題とと“志”をお聴きになりたい方は、ぜひ、下記動画をご覧ください。

日本語が苦手なろう者との関わりで見えてきた課題

手話との出会いは33年前。韓国で手話通訳をし、22年前に来日してからも手話通訳をしています。15年ほど前、ある外国人ろう者に出会いました。聞こえる私でも日本語を学ぶのにとても苦労しました。外国人で耳が聞こえないともっと日本語を学ぶのは大変だろうと感じました。外国人ろう者が日本語を学ぶところがないならと『名古屋ろう国際センター』を立ち上げました。

たくさんのろう者と関わっていく中で、手話を母語とするのは外国人ろう者も日本人ろう者も同じ。両者にとって日本語は第2言語となることがわかりました。聞こえる私たちは1日に2万語ぐらいの情報を意識しなくても「耳」から得ています。ろう者は自分から見ない限り、情報を得ることができません。ろう者は1日にどのくらい情報を得ているでしょうか? 聞こえないために日本語が苦手なろう者がたくさんいます。言語が違えば、親子でもコミュニケーションがとれない人がたくさんいます。そのことを多くの人に知ってもらいたい。みんなでろう児家庭を支えていきたいです。

キムさん3

親子をつなぐ絵本。読み聞かせで育まれる信頼、共感、日本語の力

親から絵本を読んでもらった幼いころのあたたかい記憶を持っている人は多いと思います。お母さんのひざに乗って、言葉のリズムや雰囲気を全身で感じ取る。そこで子どもたちは言葉の「概念」も自然に学んでいるのです。オオカミは怖い、春は暖かい…。言葉の背景にある「概念」を理解することは、言葉や情緒の発達にとても大切なことです。

「ぞう」と「ぞうさん」、「鼻」と「お鼻」の手話は同じです。でも、この2つはやっぱり違いますよね? こういうちょっとしたニュアンスの違いを理解するのも、耳からの情報を得られないろう児にとってはとても難しいことなのです。けれど、絵本にはろう児や家族を支える力があると信じています。私には3人の子どもがいますが、一番下の子とは一緒に絵本を読む時間が少なかったために、思うように韓国語を習得させることができませんでした。深い話ができず、とてももどかしくなる時があります。ろう児の親も同じ気持ちなのではないかと思うのです。

キムさん2

ろう児家庭に笑顔を! 募らせた「想い」をいよいよカタチに

絵本の読み聞かせを通して得られるものは、言葉だけではありません。社会性や思考力を身につける基礎を築き、他人を思いやるあたたかい心や自ら考える力が育ちます。日本語の理解が足りないために、非言語でしか自分の気持ちを表せないろう者と深く関わる中、「小さいころから手話や絵本を使って家族で触れ合う時間があれば何かが変わっていたかも」という気持ちが年々高まっていきました。

団体を立ち上げてから5年間、その想いを募らせ、ろう児家庭に安心感を持ってもらえるよう、日本語教師の勉強をしました。団体としての信頼を得るため、認定NPO法人にもなりました。ようやく準備が整ったという気がしています。

家庭の中で想いを伝え合えず、もどかしい思いをしているろう児家庭へ笑顔を届けるために、私たちは一歩を踏み出します。小さな手と手がつむぎだす大きな可能性を、あなたの手をたずさえて、応援していきませんか。

ミエルカ2016・ろう国際

「取材したフレンドレイザーの声」岡部真記さん(専門職)

キムさんのお話を聞いて、「音」が読めても言葉の「概念」がわからなければコミュニケーションはできないのだということに初めて気がつきました。親子でも手話通訳を介さないと思いが伝えられない家庭があるという現実に衝撃を受けます。

しかし、絵本には力がある。そのことを私たちは経験的に知っています。一生懸命手話を学ぶ親の姿は、ろう児を勇気づけ、一緒に手話で絵本を読んだ経験は親子のかけがえのない宝物になると思います。名古屋にはまだ手話で絵本の読み聞かせを学べる場はありません。親子の手話教室もほとんどありません。今回の取り組みがろう児家庭をあたたかく包み、ろう児たちの未来を照らす希望となっていくと信じています。

岡部さん

認定NPO法人名古屋ろう国際センターの事業指定プログラム「ミエルカ」2016~手話で絵本を読み聞かせ!ろう児家庭に笑顔を届けるプロジェクト!~を寄付で応援したい方はこちらからどうそ!