【ミエルカ2014/代表者の志インタビュー】丹羽典子さん(NPO法人にわとりの会 代表)

丹羽典子さんが「助成先が志を語るドネーションパーティ!」で語った“志”をお聴きになりたい方は、ぜひ、下記動画をご覧ください。

「言葉の壁」で苦しむ子どもたちの夢を叶えるためのお手伝い
~見て見ぬふりをしていた私との決別~

「クラスで一番困っている子の力になろう。そうすれば世の中はきっと昨日よりも少しよくなるはず」。そんな思いで小学校教諭になり、はや30年以上が経ちました。3年前に外国語で音声の出る漢字カードの普及を始め、今では子どもたちの学習意欲を高める漢字検定も実施しています。

私が初めて外国人児童と出会ったのはもう20年以上前のことです。日本語の能力や親の経済力が原因で、進学をあきらめざるを得ない子どもたち。「言葉の壁」で苦しむ子どもたちをどう助ければいいのかわからず、見て見ぬふりをしてきました。

6年前に偶然、フィリピン人の女子児童を受け持つことになりました。そこで知ったのは、知的能力も学習意欲も高いのに小学校1年生レベルの漢字も書けず、授業についていけていないという悲しい現実。ずっと後ろめたさを感じていた私はそれ以来、子どもたちが夢や希望を持って、自らの未来を切り拓いていけるようなんとかして進学させてあげたいと、漢字カードの普及活動に取り組み始めました。子どもたちが本来持っている能力を発揮できるよう、そのお手伝いをするのが私の使命だと思っています。

丹羽さん写真

子どもたちに迫るダブルリミテッドの危機

1990年、入管難民法が改正されて在留資格が大きく見直され、日本における外国人労働者の受け入れが容易になりました。労働者として単身で日本に来た人々は、生活基盤が整うと家族を日本に呼び寄せ、新たな暮らしを始めました。しかし、子どもたちに待っていたのは明るい未来ではなく、「言葉の壁」でした。

ダブルリミテッド――。こんな言葉を耳にされたことはあるでしょうか。来日した子どもたちには、学校に入ると当然ながら日本語での授業が待っています。理解が追いつかないまま新たな知識や情報が積み重なることで、それらの習得はおろか、日本語も十分に身につけることができなくなります。ましてや、母国と遠く離れた日本では母語の運用能力の向上が望めるはずもなく、2言語ともに発達できない危険な状態(=ダブルリミテッド)に陥る恐れがあります。バイリンガルになるどころか、不登校や中退へとつながり、子どもたちの将来が閉ざされてしまっているのです。

【にわとりの会】メイン写真

漢字カードで切り拓く子どもたちの未来

文部科学省によると、愛知県内の高校などへの進学率(2013度)は約98%。しかし、外国人生徒に限れば、高校に進学できたのは中学校に在学していた生徒数のうち約30%で、統計上表れない日本国籍を取得した子どもを含めると、「外国につながる子どもたち」の進学率は10%程度に過ぎないのではないかと推測されます。

彼らは家庭では母語を使っていることが多く、教科学習に必要な漢字の習得に苦労しています。日本人向けのカリキュラムしか組まれていない日本の教育現場では、中学、高校と学習内容が高度化する前の小学校のうちに、基礎となる漢字を習得することが不可欠です。楽しく学ぶことができる漢字カードは、これらの子どもたちの成長を後押しするだけでなく、英語やポルトガル語など6ヶ国語に対応しているため、母語の維持や向上にも効果が見られます。

ダブルリミテッドの連鎖によって、子どもたちの幸せが奪われています。学校や日本語教室に漢字カードを配布し、活用してもらうことでその連鎖を断ち切り、「言葉の壁」を打破するきっかけにしたい。これは、彼らだけの問題ではなく、日本が解決していかなければならない大きな課題です。私たちはこのプロジェクトに全力で挑みます。

「取材したプロボノの声」雛谷優さん(会社員)

雛谷さん写真

プロボノとして「にわとりの会」を支援することになったのは2014年秋のこと。

ダブルリミテッド―。耳慣れないこの言葉の意味を知るにつれ、胸が締め付けられる思いでした。生まれ育った国で身につけた母語と、新しく暮らすことになった日本で必要な日本語。その2つが未発達という意味ではありますが、子どもたちの未来、そして日本社会の行く末にとって大きな足かせになっているという点でもダブルリミテッドという言葉の意味は深いと感じます。

丹羽典子代表が教壇に立つ小学校で、名前を略して「にわのり先生」と呼ばれていたことから名づけられた「にわとりの会」。しかし、活動はまだまだ「たまご」から「ひよこ」にかえったところです。子どもたちが等しく大きな夢を描き、目標に向かって歩んでいける社会をつくるのは、私たち大人の責務だと思います。

ひよこが巣立ち、真の意味でにわとりになるまで、みなさまの温かいご支援をお願いします。

 

NPO法人にわとりの会の事業指定プログラム「ミエルカ」2014~漢字カードによる外国につながる子どもたちの日本語学習応援事業~を寄付で応援したい方はこちらからどうそ!