「名フィル子どものエール基金」2015年度助成事業報告

●事業名:子どもと街頭パトロール
・団体名:NPO法人全国こども福祉センター
・助成金額:290,000円
※解決に挑んだ【地域課題】と【解決策】は、下記をご参照ください。
【地域課題】愛知県の不良少年数は74,316人(2013年)。2011年から2年連続増加。
【解決策】子どもと街頭パトロール

【助成事業に取り組む中で、最も印象的なストーリー】
街頭で出会った少年Aは15歳。高校には行っていませんでした。最初に声をかけたスタッフ以外も、何度も何度も街頭に出て話をするうちに、彼はボランティアの大学生たちとなかよくなることができました。彼は次第に、バドミントンや街頭パトロールなどの活動に関わるようになりました。彼は母子家庭のため、家ではひとりでいることが多いようでした。することがないと、名古屋まで出てきては、駅でたむろしたり、スマートフォンで遊び相手を探していました。

2015年9月にTV取材(10月放送)をされていたとき、第三者である記者に対して、ここが「居場所」「家族」「ここがあったから福祉と出会えた」と話していました。現在は、アルバイトをしながら学校で介護を学んでいます。また、当センターのスタッフも彼の母親や姉と会う機会が持て、家族との接点を持つことができるようになりました。

全国こども※写真は街頭パトロールの様子

●事業名:視覚障がい者の事務職疑似職場環境
・団体名:名古屋視覚障がい者職業開発委員会
・助成金額:590,000円
※解決に挑んだ【地域課題】と【解決策】は、下記をご参照ください。
【地域課題】ハローワークの障がい者対する求人は270件、うち事務作業は104件(勤務先:愛知県内/2015年3月時点)
【解決策】視覚障がい者の事務職疑似職場環境

【助成事業に取り組む中で、最も印象的なストーリー】
今回の事業は、視覚障がい者をターゲットにした事業でした。視覚障がい者は「目視で確認すること」が得意ではありません。しかし、今回の事業には一人、発達障がい者も一緒に活動しました。わたしたち視覚障がい者の不得意な部分を発達障がい者がフォローし、発達障がい者の不得意な部分を視覚障がい者がフォローする。いわば、ワーキングシェアが自然にできあがっていました。

ワーキングシェアにより、それぞれの障がい者が抱える問題点を補えることで、仕事に対するストレスを溜めない仕組みができました。これがもっと広がっていけば、今までは働く場が見つからなかった障がい者にも働く場が広がっていくように感じました。
また、障がい者は同じ困難を抱えている中で、一緒に考えて実行してみたり、やり方を教えてもらいながらできるようになったりする場面がありました。互いに刺激し合いながら、小さなことでも誰かの役に立つという意識を持てたことで、自身の存在価値を上げることにもつながりました。

viwa※写真は事務職疑似職場環境で実習する様子

●事業名:隣人の難民と知り合いになろう
・団体名:NPO法人名古屋難民支援室
・助成金額:203,174円
※解決に挑んだ【地域課題】と【解決策】は、下記をご参照ください。
【地域課題】名古屋入国管理局での難民認定申請者数 19人(2006年)→517人(2013年)
【解決策】隣人の難民と知り合いになろう

【助成事業に取り組む中で、最も印象的なストーリー】
地域住民にとって顔の見えない難民が顔の見える知り合いになること、また、難民が逃れてきた日本社会の地域で安心して暮らせるようになることを目的として、水かけ祭りとミャンマー料理を作って一緒に食べる交流会を行いました。ミャンマーの伝統的な新年のお祭りでは、ミャンマーの子どもと日本人の子どもが一緒に水をかけ合って遊ぶ様子が見られ、また、料理交流会にも日本人の子どもが5人と大人が19人参加し、ミャンマーの方たちに教わりながら、子どもたちが楽しそうに料理を作り、できあがった料理を一緒に食べました。

参加された子どものお母さんの「3歳、5歳の子どもも参加させていただき、学生のみなさん、ミャンマーのみなさんにたくさん遊んでいただけたことで、子どもにとってもすばらしい地域交流、国際交流、多世代交流になりました」というお言葉や、ミャンマーの方に日本語を教えている学生からは「普段は先生と生徒としてミャンマーの方と関わっていますが、今回は料理を通じて、違ったやさしい一面を見ることができました。こういった機会は今後も大切にしていきたいです」という感想をいただきました。また、ミャンマーの方からも「とても楽しかった。こういう機会はとても大事だと思う」という感想をいただきました。

難民※写真はミャンマー料理を作っている様子

●事業名:障がいの重い子どもの子育ち支援~食べること、ふれあうことを大切に~
・団体名:NPO法人ひろがり
・助成金額:503,496円
※解決に挑んだ【地域課題】と【解決策】は、下記をご参照ください。
【地域課題】名古屋市に住む児童・生徒の約1,000人に2人が重度・重複障がい児(2013年)
【解決策】障がいの重い子どもの子育ち支援~食べること、ふれあうことを大切に~

【助成事業に取り組む中で、最も印象的なストーリー】
わくわくプロジェクト(宿泊生活学習)に参加した今回の4組のご家族のうちの1名の母親は、障がい児の子育てや介護に疲れ、精神を病み、数か月入院されていました。お子さんは4年生で、体も大きくなり、座るのも移動するのも、着替えも食事も入浴もすべて全面的な介助が必要な上、他のご家族との関係など、他にもいろいろな問題を抱えていました。それらから離れて入院することで少しずつ回復し、退院後も静養しながら、ヘルパーやデイサービスなどを活用して、母親が精神的に楽になるよう配慮しながら、障がい児の子育てと介護に少しずつ復帰しつつありました。

今回のわくわくプロジェクトには、他の親子とともに参加されました。お子さんの相手や介助を支援者が全面的に行い、お風呂も支援者とともに入り、花火や散歩も楽しみました。母親たちは、日頃の介助と家事から開放され、障がい児の子育てに関する研修を受けることができました。また、同じ境遇の母親や支援者と日頃の悩みや思いをゆっくり話すことができました。志摩のおいしい空気と手作りの料理、あたたかな雰囲気の中で、母親に笑顔が戻り、「明日からのエネルギーをいっぱいもらったので、少しずつがんばれるわ」と話されたのが印象的でした。他のご家族も、このわくわくプロジェクトに参加して本当によかったと毎回話してくれます。わたしたちスタッフもその言葉から、続けていく力をもらったように思います。

ひろがり※写真はわくわくプロジェクト参加者の記念写真