「住友理工あったか未来基金」2016年度助成事業報告

●事業名:ニート・ひきこもり・生きづらさを抱える子どもたちの居場所づくりと仕事づくり

・団体名:NPO法人リネーブル・若者セーフティネット
・助成金額:500,000円
※解決に挑んだ【地域課題】と【解決策】は、下記をご参照ください。
【地域課題】進路未決定のまま中学を卒業する生徒が約750人 2015年度全国最多人数(全国平均0.68%、愛知県0.96%)
【解決策】安心できる環境で、さまざまな活動に挑戦、体験でき、自分がやりたいこと、学びたいことを見つけられる居場所づくり

【助成事業に取り組む中で、最も印象的なストーリー】
高校1年生の秋にいじめが原因で中退をしたAさん。その後、広域通信制高校に入学しましたが、登校日は月に1度程度のため退屈な毎日を過ごしていました。SNSで知り合った友人とリアルに会う約束をしましたが、10回挑戦し、10回とも待ち合わせ場所に来なかった、という悲しい経験があります。中退をして1年後にリネーブルの活動を知り、母親とともに来所しました。リネーブルの仲間を知り「自分と同じように苦しんでいる人がこんなにいるんだ」と励みになったと言います。現在、週2日居場所に参加し、ゲームやスポーツを楽しみ「仲間ができた」とうれしそうに話します。また、自分に自信を持つことができ、バイトにも通えるようになったそうです。近所の方からは「最近元気になったね」と声をかけられたと言います。

リネーブルの親の会に参加をした17歳の息子を持つお母さん。息子さんは高校1年生の秋に進学校を中退。その後、塾に通ったり家庭教師をつけたりしました。カウンセリングやさまざまな相談機関に連れて行きましたが、どこも二度と行きたくないと本人は言うそうです。夫や義理の両親に責められ続け、息子がこうなったのは母親である自分のせいだと思っています。お母さん自身の不安感が強いように感じました。二~三度、リネーブルの居場所にお母さんが参加し、リネーブルの仲間と一緒にゲームをして楽しみました。息子にリネーブルをすすめると「ぼくを収容所に入れる気か!」と怒鳴られたと言います。親子の信頼関係、まずは家庭が安心して過ごせる場所になることが大切なので、居場所につながる前の環境調整が必要だと感じました。お母さんとの相談を継続し、本人との相談につながるよう進めていきたいと思います。


※写真は畑仕事の様子

●事業名:困難な少年たちの社会的自立を推進する寄り添う支援事業
・団体名:NPO法人再非行防止サポートセンター愛知
・助成金額:500,000円
※解決に挑んだ【地域課題】と【解決策】は、下記をご参照ください。
【地域課題】愛知県における刑法犯少年数は、3,673人(2014年)、2,844人(2015年)
【解決策】逮捕から出院後の社会的自立までを一貫してサポートするために

【助成事業に取り組む中で、最も印象的なストーリー】
○18歳ホームレスからの高校進学
少年院出院後、住み込み就労をするが腰を痛め、仕事ができず解雇された18歳の少年。保護者から養育放棄されたため、友だちの家を転々としたあげく、ホームレスになってしまいました。名古屋保護観察所から緊急で受け入れてほしいと依頼があり、2017年5月からホームで暮らすことになりました。幼少期の虐待が原因で、心の病があり就労意欲が湧かず、ホームに暮らせる措置期間が終わりに近づいてきました。ホームの退所後どのようにしたらいいか、理事会で検討会議を行いました。再度、住み込み就労へいざなってもホームレスになることは目に見えているため、当法人のサポートとは一旦切り離した上で、生活保護を同行申請し、個人支援として継続することにしました。ホームの近くで住まいを構え、社会的自立へいざなうため、継続サポートを行うことになりました。

12月下旬、生活保護の受給が決まると、少年が「高校に行きたい」と思ってもみない言動をするようになり、高校進学のための準備が始まりました。生業扶助で高校進学費用の拠出を保護課と相談しましたが、前例がないためそれはかなわず、保護費の中から高校進学資金をねん出することとなりました。現在、定時制高校に合格して毎日元気に通学を始めました。高校卒業後には、生活保護からも脱却して真の社会自立に向かっていってほしいと思います。

○社会的養護が必要な少年のために活用した基金の使途の一例
母は死亡。父は刑務所収監中のため、児童自立支援施設で生活をしていた16歳の少年。施設退所後は、住み込みで外仕事をしていました。未成年のため仕事の限定もあり、収入にもつながらなかったため仕事を辞めてしまい、住む家も失いました。友だちの家を転々としながら暮らしていましたが、手持ちの所持金もなくなり、いつしか窃盗をするようになってしまいました。そして逮捕され、鑑別所に収監されてしまいました。

少年が犯罪を行い逮捕されると、警察署から家庭裁判所へ、そして鑑別所に収監されます。鑑別所でさまざまな鑑定をしたあと、少年審判となり、保護観察か少年院装置等の処分がくだされます。審判の場には、保護者や弁護士(国選または私選)が同席します。同席できる第三者には、弁護士の他に「当事者付添人」と言って、少年の気持ちを代弁できる認められた民間人も同席することができます。当事者付添人については、保護者からのご依頼で、「有料」でお引き受けしています。帰る家もなく頼れる保護者もいないため寄り添おうと全員一致で決め、寄付金を活用して、鑑別所で何度も面会し、高坂理事長が当事者付添人として少年審判に同席することになりました。
審判の結果、少年院送致という結果にはなりましたが、少年院入院後には少年院面会を行い、出院後には当法人が運営するホームであたたかく迎え、再非行なく生き直しができるようサポートを行っていきたいと思います。


※写真は食事を兼ねた交流会の様子