【深掘りしたい地域や社会の課題】NPO法人ふれあいサロンさん・さんガーデン

申請事業名:見過ごせない子育ての『ずれ』コーディネート支援事業
申請団体名:NPO法人ふれあいサロンさん・さんガーデン

※私どもが運営する乳幼児教室「ベビー&キッズスクールさん・さん」水曜ベビークラス(1~2歳児対象)での様子。からだを使った遊びや知育遊びを通して、母親にはお子さんへの対応や子育ての知識、スキルなど自然に身につけてもらえるように努めています。
さんさん写真1
<場面>
1.先生が名前を呼び、右手を上げてお返事することを促します。
2.母親は右手を教えるとともに、腕をとりながら、上げることを子どもに教えます。自分でお返事ができないので、母親が代わりに声を出して返事をします。
<母親の関わり>
母親は「右手」という身体のパーツの名前と場所を子どもにスキンシップをしながら教えています。
母親が返事を代わりにすることで、母親はお返事のお手本になっています。
子どもと視線を合わせコミュニケーションの楽しさを伝えるとともに、「お返事ができた」を褒め喜んであげています。
さんさん写真2

<場面>
※立方体の積み木がすでに詰める子どもたちのワーク
1.立方体の積み木を積ませます。
2.三角柱の積み木や円柱の積み木をさらに与え、積ませます。
3.母親は様子を見守り、声掛けをします。積むことが出来ないときは、形をよく見ることやほかの置き方をさせるなどの声掛けをしながら、取り組ませます。
<母親の関わり>
子どもが初めてのことや出来ないことに取り組むとき、出来ずに癇癪を起してしまうことがあります。しかし、これは母親の声掛けで取り組む時間を延ばすことができます。できていること褒めながら、ヒントを与えたり、母親から手伝いを申し出たり、子どもの「できた」を増やします。

【深掘りしたい地域や社会の課題】
わたしどもは「見過ごせない子育ての『ずれ』」に注目し、1歳6か月児健診でフォローが必要とされた子どもの可視化に取り組みます。(※フォローが必要とされるのは、心身のなんらかの発達に遅れが認められるこども達です)

近年、子どものこころの変化に注目が集まっています。学級崩壊やいじめ、先生が注意したら突然キレたり、暴れだすなどの問題行動はたびたびマスコミに取り上げられます。

乳幼児教室の中で年間のべ1000組の母子を受け入れている私どもは、こどもの成長やこころの育みに母子関係が大きくかかわっていることをよく認識しています。

小児科医師の宮尾益知氏は「こどもの精神や行動に問題が生じる背景には、おもに4つの原因」があり、それは「1.こどもがもっている素質、2.発育環境、3.社会との関係、4.偶然に起こる出来事や出会い」としています。発育環境のなかでは「両親との関わりなどの生後の発育環境」を挙げていることから、両親とのかかわりの重要性は明らかです。

私どもが乳幼児教室を行っている中で、お子さんの成長が気にかかることがあります。こちらの言っていることは理解しているのにことばが出なかったり、眠たいのに寝られなかったり、いやいやがひどかったり等あります。事実、これらは寝かしつけやいやいや期などとして、育児雑誌では子育ての悩みとして何度も取り上げられています。これは、母親が対応できないために、悪循環になっていることもあります。たとえば2歳児のころの「いやいや」は「やりたい」気持ちが育ってきた証です。ここで「失敗するから」「時間がかかるから」など母親の都合を優先させればさらに「いやいや」がひどくなります。母親が「成長した」という喜びの目で見る(決して「魔の2歳児」とは見てはいけない)、そして、余裕をもって行動し、危険を取り除いて子どもにさせてあげるなどの対処をすれば、容易に済むことも多いのです。

赤ちゃんはお母さんやほかのひととの関わりからさまざまなことを学びます。例えば、起きたら「おはよう」という挨拶を言われなければ「おはよう」を知ることはできません。乳幼児健診でも行われる指さしですが、指さしをしない母親の子どもは、指さしを知らないので指さしをしません。

愛情を持って育てていても、子育てがほんの少し「ずれ」てしまっているのです。

子育てのほんのちょっとの「ずれ」は、母親の子育てへの知識や経験、スキル、興味、また、個性や資質、環境ともに、子育ての継承もできていないことに起因しています。ほんのちょっとの「ずれ」ですが、解決されなければこどもの成長、こころの成長に大きくかかわり、親子の愛着関係に問題が生じたり、虐待にもつながりかねないのです。

1歳6か月検診でフォローが必要とされた子どもの中には、このような子育てのほんのちょっとの「ずれ」と関係しているのではないかと考えられます。可視化することができれば、現在の子育て支援に一石を投じることができると思います。

子育てのほんのちょっとの「ずれ」ではありますが、決して見過ごさすことはできないと、わたしたちは考えています。この「ずれ」を調整する、子育てコーディネートを行う支援事業に取り組みたいと考えています。